週刊ビッグコミックスピリッツに連載中の漫画「リボーンの棋士」が最高に面白い。スピリッツは惰性でウシジマくんを読んでて、まあまあ面白い漫画がありつつもこの後どうしようかなと思ってた頃にリボーンの棋士にハマっていったので継続して読んでいる。
今はリボーンの棋士の為にスピリッツを購入していると言っても良い。
とりあえずこの漫画の色々といい所や気になるところなどをネタバレ込み、かつニワカ将棋指しの視点で書いていくことにする。
↓ 読んでない人はとりあえず読んでください。損はしない。↓
今は1巻と2巻がKindleで無料で読めるから。2020年7月6日迄。多分6巻まで自動的に買うことになるだろう。
リボーンの棋士
リボーンの棋士とはタイトルの通り。棋士になる夢にやぶれた元奨励会員が再び立ち上がり将棋と向き合って行く、再起物語である。
作者は鍋倉夫さん、将棋の棋譜は元奨励会員でその後アマ名人のタイトルも獲得された鈴木肇さんが監修されている。
鍋倉夫さんはこちらのカナロコの記事によるとリボーンの棋士が初めての連載となるそうだ。→→→ https://www.kanaloco.jp/article/entry-36770.html
正直、初連載と思えないほど落ち着きがありながらも引き込まれるドラマを作っている。
「リボーンの棋士」タイトルは手塚治虫の漫画「リボンの騎士」になぞらえたものだが、中身は関係ない。発音については「リボンの棋士」っぽい発音をされているのではないか?説を推す。
→→→ https://www.youtube.com/watch?v=FVJVi_7JEgA
こちらは将棋youtuberで先日プロ編入試験に合格したリアル版リボーンの棋士アゲアゲさんこと折田翔吾四段のチャンネルにて、監修の鈴木肇さんが作品の宣伝をしている動画。「リボンの騎士」にも聞こえる感じで発音されてないですか??
既刊6巻、現在は将棋ウォーズとのコラボも行うなど勢いが増している。
リボーンの棋士の魅力 棋士への道の厳しさ
将棋でプロ棋士になるには過酷な道のりだ。ほぼ小さい頃から将棋に取り組み、才能のある子は奨励会というプロ養成機関に所属することになる。最近ネットやTVなどでその存在を知る機会も増えているので奨励会についてご存知の方も多いだろう。
奨励会の中で日々切磋琢磨しながら、みな青春時代のほぼすべてを捧げてプロを目指していく。プロへの道の最終関門は奨励会三段リーグの戦いである。年2回リーグ戦が行われその時の成績上位者2名だけがプロ棋士になれる。年間ではほぼ4名という狭き門。
加えて年齢制限があるのだ。いつまでも奨励会に所属していられる訳ではない。26歳までに棋士になることが出来なければ退会を余儀なくされる。作中でも語られている鉄の掟である。
それまで将棋にすべてをかけてきた人間が26歳になって夢を諦めなくてはならない絶望と苦悩。その時々で実現可能性が100%に近い現実的な進路を選択して来た常人である私には計り知れない。
本作も元奨励会員、年齢制限によりプロ棋士への道が絶たれアルバイトをしながら生き方について模索を続ける男、安住浩一を主人公に据えている。
奨励会の過酷さとその後
この漫画の面白さとしてまずひとつ。現実を下敷きにした舞台設定が魅力的なのだ。人生を賭けた人間同士が本気で戦い狭い門を争うシステム、そしてその後の人生は設定として大きな力がある。
これを題材にするだけである種の面白さが保証されてしまう。
主人公の強さと苦悩に説得力が出る。同時期に連載されていた将棋指す獣や、名作ハチワンダイバーしかりである。そして本作もその設定を存分に活かしている。
※本気で戦って来た方に対して魅力的とは呑気な外野すぎて申し訳ない表現になってしまったかも知れない。
また現実ではこのシステムに対する賛否はある。現在進行中の若手プロ棋士、上位奨励会員、上位女流棋士による新人王戦というトーナメントにおいて初戦を勝ち上がった人数はプロ棋士よりも奨励会員の方が多いという逆転現象が起きた。それだけの実力の割に門戸が狭すぎるという意見もある。
プロ編入試験
さて前述した将棋Youtuberであるアゲアゲさんこと折田翔吾四段。こちらは2020年2月プロ編入試験に合格し、晴れて棋士になった方だ。折田四段も元奨励会員、年齢制限により退会後はYoutuberとして活動しながら将棋を続ける。棋力を高めアマチュア棋戦で活躍し編入試験に合格した。まもなく公式戦デビューされる。
そう、一応年齢制限を越えた人間にも棋士になるチャンスはあるのだ。アマチュア同士の厳しい戦い勝ち抜いた後、アマチュア上位枠で参加できるプロ棋戦においてプロ棋士相手に10勝5敗以上の勝率を上げるとプロ編入試験の受験資格を得ることが出来る。
さらにプロ編入試験ではプロ棋士相手に5戦のうち3勝を上げなくてはならない。年齢制限超えの救済措置というにはまたしても厳しすぎる制度である。
余談になるがこの現代のプロ編入制度設立の礎を築いたのが瀬川晶司六段である。瀬川さんの半生は「泣き虫しょったんの奇跡」に記されており、松田龍平主演による映画にもなっている。
さらに余談だがこの映画の音楽は元BlankeyJetCityの照井利幸氏が担当している。予告編でエラいかっこいい音楽が流れてるなと思ったら照井さんだったので嬉しかった。(私の趣味の一つであるロックと将棋が繋がるとは!!)
話をプロ編入試験に戻そう。発端となった瀬川六段以降、プロ編入試験の合格者は今泉四段、折田四段だけである。
※今泉氏の段位をどう書くか?この記事を書いている今日まさにプロ通算100勝、五段昇段がかかっている対局が行われているのだ。さーて、今確認しました。となんと二手指しで負けていた。次回の対局にて今泉五段となるか、応援しています。
本作、リボーンの棋士の登場人物も自分の将棋と向き合いながらプロ編入試験を目指していくことになる。ただこちらもまた狭き門。現実では過去15年で3人しかこのルートでプロになったものはいないのだから。
リボーンの棋士の魅力 登場人物キャラクター立ちすぎ
リボーンの棋士のバックグラウンドには現実の奨励会をはじめとしたシステムそのままにプロ棋士への道の厳しさがある。そしてアマチュア将棋界の懐の深さもある。その舞台の上で作者の鍋倉夫さんの腕により魅力的なキャラクターたちがイキイキと描かれている。
この人並の新人らしくない、キャラクターの立て方が絶妙なのだ。
主人公 安住浩一
主人公の安住浩一。奨励会退会後3年、カラオケボックスにてアルバイトをする青年。奨励会時代は空気に飲まれ、自分の将棋を指すことが出来ず年齢制限を迎える。新しい生活を送りつつも将棋への未練がフツフツと湧き上がっていた。
一度は封印したはずの将棋への気持ちを受け入れ、再び将棋を指していく。
「リボーンの棋士」というタイトルだが1話目の時点で上記のことが語られており、リボーンした状態で物語が始まる。
リボーンした安住は前向きで将棋を純粋に楽しむことを覚え、主人公然とした光属性のキャラクターとなる。
さて、リボーンの棋士の魅力は安住もさることながら脇役たちのキャラクター。レギュラー格の登場人物からほんの少ししか出ない人までキャラが立っているのだ。絶妙に配置されている。
もうひとりのリボーンの棋士 土屋貴志
カルト的な人気を誇る土屋。この漫画が面白い大きな要因でもある存在だ。土屋について語るだけでもう一記事は余裕で書けてしまう。
土屋もまた安住と同じく元奨励会員。年齢制限で退会となったあとゾンビのように実家の食品工場で働く日々。やはり将棋への思いを捨てきれず、ときどき市井の将棋道場に顔を出しては格下相手に指す自分を卑下している。
吹っ切れたように前を向いてる安住に対して土屋は卑屈。皮肉屋でプライドが高い。「ああ、漫画によくあるイヤミを言う役で主人公を引き立たせる位置の人ね」と思わせるのだが、登場数ページで裏切られる。
将棋に対しての想いは誰よりも強い。奨励会を退会してもはや何もかかっていない対局なのに負けた悔しさで目に涙を浮かべる。読者はこの時点であっさりハートを掴まれるのだ。こいつ将棋への想いは熱いぞ!と。(土屋はいつも分厚いメガネをかけており以降瞳が描写されることはない。でもこの時の素顔をみるになかなかいい男よねと思ってる)
彼もまた安住にあてられる形でアマチュア棋戦に向かうことになったリボーンの棋士なのだ。
すでに過去を吹っ切って現在の将棋に向かう王道的な主人公キャラである安住に対し、過去に囚われ「将棋の呪い」を抱え鬱屈しながらも将棋を刺すことが辞められない土屋。この二人の対比というか両輪が作品を面白くさせている。
読者としては漫画の主人公のような安住よりも、コンプレックスを抱えた土屋のほうに感情移入してしまうのではないだろうか?私ももちろんそうだ。
土屋の名シーンをたくさん上げてみる。
土屋の行動やセリフは結構な頻度で読者をエモらせる。「土屋ぁあああああああ」と心の中でむせび泣く。
いくつか私のハートを揺さぶった「土屋名シーン」について紹介しよう。「俺の好きな土屋」だ。この記事はすでに長いが、正直ここだけでも良いのではないか?と思っている。
皆さんも「分かる分かる」と同調していただくか「この土屋が入ってねーぞ」など楽しみながら確認して欲しい。
- 将棋に負けて目元を拭う初登場土屋
- 「前に進んでいるんだな、やっぱり強いなあいつ」と安住を認める土屋
- アマ竜皇戦予選、参加の連絡も入れずエレベーターボーイとして安住を待つ土屋
- エリートサラリーマン片桐にたいして「いい時計してますね」と息巻く土屋
- 女連れか?お前…女がいたのか。
- 親父だらけの道場に見学に来た女子に対し「本当に将棋好きなの?」と絡むもカウンターの笑顔に赤面する土屋
- 古賀さん研究会宅前でしゅわしゅわと汗を書く土屋
- 新戦法開発を狙う安住に対し「はっきり言って時間の無駄だぜ」と指差しキメポーズのあとに「それより早く対局しようぜ」と迫る土屋
- 同門の後輩筋にあたる奨励会員高橋くんを叱咤激励する土屋
- ベスト4をかけた対局が安住戦となることを気にする土屋
- 片桐さんにコンプレックスをぶつける土屋
- コーラを飲み干し空き缶を握りつぶす土屋(一気飲みかよ)
- 「まだ終わっちゃいないんですよ」
- 奨励会時代ポーカーに行く安住に驚く土屋
- 「ただ俺が弱かっただけだ」
- うるせえ
- 勝勢になり加治竜皇を見つける土屋
- 時間切れ負けを食らいながらも「どこがよくなかった?」と感想戦を切り出す土屋
- 安住に負けてトイレでやっぱり泣いちゃう土屋
- 俺は誰の応援もしねぇ
- 川合の父親に奨励会の厳しさを説く、社会人としてある程度の受け答えは出来るらしい土屋
- 森さんと土屋
- 劣勢の安住に対し「あいつは面白がってるはずだ」とヒロイン森さんよりも安住のことを理解したコメントを残す土屋
- 安住の表彰式には出ない土屋
- お母さんが買ってきた誕生日ケーキを夜中こっそり食べる土屋30歳
- バイトが見つからない安住に対し、実家の仕事を融通し提案しようとする土屋
- 深夜に及ぶ安住の対局スマホでチェックする土屋、それを悟るお父さんに悪態をつく土屋
- 安住の対局結果に興奮し布団に潜るも眠れない土屋
- 対局前にエレカシを聞く土屋、エレカシを望月王将に勧める土屋
- アマ王匠戦に優勝し安住と目を合わせる土屋
- 優勝トロフィーを裸のまま持ち歩き飲み屋を探す土屋
- 久しぶりの酒、勝利の美酒を味わう土屋
- プロのタイトルホルダーに喧嘩を売る土屋
- 安住に励まされ「もっと強くなくちゃだめだ」と決意をあらたにする土屋
- 「俺も勝ち続けるからな」
- 宇野さんに安住のことを問われ「俺とあいつは仲良しのお友達じゃねえんだよ」
- 将棋ウォーズ的なアプリで「azumi」とのマッチングを狙ってる土屋
- 高橋くんにコーラをおごる土屋
- 望月王匠の研究部屋に行く土屋
- アマチュア棋戦の優勝を逃してなお顔上げて前をむく土屋ァ!
土屋、土屋、土屋・・・
ああ、土屋は最高だぜ。土屋のことを考えるだけで謎の感情が湧いてくる病気になってしまった。
とりあえずここまで書いて時間切れとなった。バックボーンと土屋に時間を使い過ぎた。
- 登場人物のキャラが立ちすぎ、その②
- リボーンの棋士は誰もがリボーンする物語
- ヒロイン論争
- 超今さらだが将棋が新しい趣味になってきた
これらについてはまた別の記事にしたためよう。
<続く…はず>